転勤先は、熱源もなく日勤だけの
小規模なビルだった。
転勤前の面談で、シフト制・ボイラーあり・エネ管を活かせる物件、という希望を出したのだが、
その全部が満たされない物件だった。
つまり小生にとって仕事の経験も積めず、プライベートも楽しめないといった最悪の環境だった。
さらに電気主任も所長がもっていたため、自分が派遣された意味が全くわからなかった。
仕事中は警備室みたいなところにみんなで座っているのだが、小さな部屋に警備員を入れておっさんが5人も居てとても狭い。
それどころか、自分の机がない。椅子にすわると目の前にノートPC、その後ろに制御用コンピューターの画面とキーボードがあり、
本一冊置くスペースもない。それどころかノートPCは机から常にはみ出して置かれている。十分なスペースがないためだ。
仕事自体は基本的に楽では合った。
ただ巡回し、月次点検をやり、あとは詰め所でじっとしている。
面倒だったのが見積作成だ。
会社全体が、この見積作成をメインに業務をシフトしていくということで力を入れていたのだが、これが不毛を
極める仕事であった。
例えば自動扉が壊れるとしよう。業者を呼ぶ→業者が直す(この時写真を撮っておく)→報告書を作る→
業者が見積もり(作業代金の請求)を送ってくる→それを元に15%程度金額を載せて見積もりを作る→見積もりをオーナーに送る。
見積もりは会社独自のソフトでやるのだが、とても使いにくい。
更に本社に送って了解を経てから打ち出してオーナーに請求するのだが、本社の了解が来ないままになったりということが多発した。
会社独自のルールで、業者請求額に15%以上載せなければならず、また工事人ごとのニンクなどのねだんの上限が決まっていた。
この両方を満たそうとすると作業料金やニンクをルールいっぱいの金額にしても、15%に届かず、仕方ないので出張料やら移送費など
わけのわからない項目を作り金額を載せる。そうするとオーナーから「高い。この項目はなんだ、いらないじゃないか」
と言われる。
業者からの見積もりをただ書き換えて金を稼ぐという、本当に不毛な仕事だった。
移動して二ヶ月も立たない内に「面接でいった条件と違う」ということで地区長に移動を申し出て、あっさり転勤が決まった。
決まった先は、ストレスによる入院者と退職者を大量生産している、会社の中では悪い意味で有名な現場だった。
そして噂の最悪な職場にやってきた。
直ぐに最悪な原因がわかった。
オーナーだ。契約に在ることも無いことも、アレもやれこれもやれと怒鳴り散らすタイプの方。
じっさいオーナーの言うとおりあれもこれもやっていては赤字になるので
断ると怒られる。
やって赤字にすると本社が文句を言ってくる。
それで板挟みになってリタイアする人が多数。
例の見積作成についても、そんなオーナーだからたくさん文句をつけてくる。
所長じゃなくて見積もりを作った本人に言ってくる。それでまた辞める人が出る。
設備にトラブルが出ると防ぎようがないトラブルでも「お前ら毎月点検してんだろ。これじゃ
してる意味ねーじゃねーかよ。契約切るぞ」とか宣う。
ビルとしてはシフト制だがボイラー無し、そして通勤が片道1時間45分という
耐え難い、いや耐えても意味が無い職場だった。
この時点で小生は退職を決意した。
仕事はそれほどきつくはなかった。
ただ見積もりが多かったのと、清掃や警備の頭受けになっていたので全ての責任≒全てのクレームが
こちらに来る。
宿直は設備員は一人で気楽だったが、逆に言えばトラブルは一人で対処しなければならない。
特に多かったのが警備関係、とうか施錠関係のトラブルだ。
テナントが最後の施錠を失敗したまま帰ってしまうとか、施錠し忘れて帰ってしまうことが多々発生した。
その場合、テナントの総務の携帯に電話するルールになっている。すなわち夜中に電話するのだが、
他の人はそれを遠慮して?連絡せずに施錠していたようである。
小生はいらぬ濡れ衣を被りたくないので、夜中だろうとテナントに電話。出なければ所長に電話していた。
基地外オーナーから色々言われても、小生的にはそれほどストレスは感じなかった。
何を言われても「分かりました、所長に伝えておきます」で終わりだ。
みんな他人がいうことを真に受けすぎるからおかしくなるのだと思う。
点検しても意味ねーじゃねーかと言われても、じゃあ契約を着ればいいのでは?程度にしか思わない。
何にも出来ねーなお前らと言われても、あんたみたいな奴からはそう見えるだろうよとしか思えない。
子供の頃から孤独ゆえ、他人の評価を気にしない性質が役に立っているのだろう。
小生が呼ばれたのは前任の電気主任がやめるためだ。
前任者は社歴が20年ぐらいの生え抜きだったが、基地外オーナーにいろいろ言われて
数週間音信不通になったことがあるらしい。
最近会社に出てきたが、もう無理やめるとのことだった。
他にも倒れて2ヶ月ぐらい入院していた若い人もいた。
またCVJといって、自社のビル管に混ぜて他社のビル管も数人いたのだが、
彼らの回転(つまり人の入れ替わり)も早かった。
小生はやめると決断した後、
有給を使いきって冬のボーナスを貰えるタイミングで
退職届を出した。
本社からは引き止めは殆ど無かったが、地区長とは20回ぐらい面談を組まれた。
面談といってもとどのつまり、ただ「やめないでくれ」
というだけで条件の変更も何もないので、私の考えも変わりようがない。
そんなわけできっちり有給を使ってボーナスを貰ってやめた。
2物件目(小さなビル)に行っていた頃は、休みが土日のみのため
旅行には全く行かず、仕方なくジムに通っていた。
3物件目(噂の最悪物件)ではシフト制になったが、通勤に疲れすぎて出かける気にならず
旅行には行かなかった。
おかげでこの頃になると殆ど車に触らず、たまに乗ろうと思うとバッテリー切れというのが
連発した。
ジムでは周2回程度、マシンジムをこなした後エアロバイクてHIITトレーニングをしていた。
体重は落ちるどころか増え、腹も出っ張ったまま。腕も足も太くならず、
肩こりなど体の不具合にもあまり効果は感じられなかった。
おっぱい筋だけは大きくなった。あと基礎体温が大きく上がった(36.7℃ぐらい)
この頃は本当にジム以外に目立った趣味はこなしていなかった。
旅行に行かないとなると、本当に酒を呑むかネットかゲームをするぐらいしか無い。
旅をしないとプライベートでは完全なダメ人間になってしまう。