帰国

帰国して思ったことは「空気の匂いが違う」 ということ。 よくバックパッカーが言うセリフらしいが、なるほどよく分かる。
単純にフィリピンは下水が整備されてなくて臭いとか、そういう話ではない。 フィリピンの空気は粘っとしていて匂いがある。日本の空気はスッとしている。
正直、フィリピン人の大多数(つまりプロテスタントを除く)の生活スタイルや 労働観やプライベートのあり方は日本で言うリア充に近く、住みたいとも住み心地が良さそうだとも 思えなかった。 無思考無思想なのは現代日本人と同じかもしれないが、それに輪をかけて彼らは楽天的だ。 なんの手を打たなくても彼らの将来はもっと良くなると思っている。
人間的にも環境的にも、小生にとってはフィリピンより日本の方が望ましい。 ただダラダラとした労働スタイルだけは羨ましく思う。

そして転職活動

今後のプランとして二通りあった。
@直ぐに就職する。
A特級ボイラー受験後に就職する。

とりあえず手段を定めずに 職安および就職エージェントを通して就活を開始。 即座に北海道のバイオマス発電所からオファーがあった。 シフト制であったし待遇も良いし立ち上げから関われるという、就業場所(第一希望が長野周辺、第二希望が北海道) 以外は完璧に近い案件だった。いちおう一部上場企業だった。 だが小生は急ぐことはあるまいと蹴ってしまった。 今考えればここにいけばよかった。本当に。 だって十分経験してからまた転職しても良かったのだから。
小生は本当に今(長野の現場退職時)、後悔している。

過ち

その後、希望の案件がないままファミレスで特級ボイラー勉強の日々を過ごす。
しばらくして、長野で太陽光発電の電気主任者募集という案件がでた。 私は太陽光にはネガティブで、バイオマスをやりたかったのだが、 その求人票に「将来的にバイオマス発電も手掛ける」と書いてあったのでmailで連絡を取り、 来年4月で採用が決まった。
小生がこの会社に目をつけたのは、バイオマス発電かつ長野ということもあるが(それだけなら他社もあった)、 設備の施主側(出資側)であり、かつ平日休みという要望にも答えてくれたためである。
過去を振り返って、小生としては会社えらびでは、会社がお金の上流(つまり発電所なら施主側) にどれだけ近いかが重要となると考えている。
そういう意味でも、全ての条件を満たした会社を引いたと思ったのだ。 この時は…

特級ボイラー試験

車もないし勉強に集中という理由で、旅行には全く行かず3ヶ月ほど勉強に費やした。
テキストや過去問を一通り手に入れたが、協会テキストは細かいところまで書きすぎてあり、 とても3ヶ月では習得しきれないと判断し、過去問だけやった。 2ch情報によると(といっても特級ボイラーを受ける人がとても少ないため、情報も少ない) 過去問だけでは合格出来ないと言われていたようだが、 自分の暗記力の低さを十分知っている小生は、自己流の勉強法で行くと決めた。
特級ボイラーは特殊な試験で、マークシート式ではなく全てにおいて記述式。 穴埋め問題もあるが、選択肢が用意されているわけではないので、実質上ノーヒントで答えなければならない。 計算問題も途中の計算式まで審査対象になる。 そして筆記。これが完全に作文。 たとえば「ボイラーの月次点検項目と内容を書け」という問題がでる。 解答用紙には二列の四角いマスが並んでいるだけ。 項目も点検内容も自分で埋める。

そんな変わり種かつ世間的には難しい試験だが、一発合格することができた。 やはり難しい試験ほど「浅く広く」「試験中は一点でも毟り取ることを考える」ということだと思う。 特に難しい試験は、受験者全体の点数が低ければ「調整」が入り、規定されていた合格点以下でも 合格になることが多々ある。
難問奇問ばかりのハズレ年の試験にあたったからといって諦めず、1点でもむしりとってやろう。 そういう年にこそ「調整」が大きく入りやすい。 記述式ならわからなくても適当に文言を入れておこう。

そして長野へ

試験が終わり、冬から春にかけては実にのんびりしたものだった。
前の会社の友人にあったり、長野で使う車を用意したりした。

そして来るべき4月。長野へ。 晴天のもと、桜満開の諏訪湖が小生を迎えているように思えた。 会社が用意したアパートに入り、久々の仕事が始まった。 そして小生は、この会社のヤバさを察知し始める。例をあげると…
・発電専門の会社かとおもっていたが、発電用地に残っているリゾート設備を運営している(リゾートに関わるとろくなことはない)
・社長がリゾートに熱心である(リゾート経営者にろくなものは居ない)
・社長が女性社員を下の名前で呼ぶ(ブラック率アップ)
・女性社員は好きな時間に来て好きな時間に帰る(女性優遇 ブラック率アップ)
・同族経営
・ユンボのバケットに乗っての作業など(安全無視 ブラック)
・ナンバー無しの車を走らせる(コンプラ無視 ブラック)
・お金をかけるのは目に見える部分のみ、動力関係の設備はどんなに古くても放置(リゾート経営者の常套)
・仕事内容が思いつきで決まる(社長が急に言い出す)
・社長が気に入らない意見をいうとキレる(特に金が掛かることはすぐキレる)

さらに悪い事に、というか必然かもしれないが、 小生が入れられたアパートは壁がスカスカの月25,000円の格安物件。 (この時点で技術者をかなり下に見ている経営者だとわかる) 隣の住人が夜中に音楽を爆音で聞く基地外で、重低音が壁を伝わってきて眠れない日がつづいた。 不動産屋経由で文句を行っても一向に収まらず、直接突撃したらおとなしく謝ったが、 そもそもは格安アパート自体が行けないのだ。 やすければ壁も薄く、住人のほどもしれている。 実際に駐車場の車は小生の物いがは全て軽自動車だった。
そんなわけで二ヶ月足らずで引っ越し。

嘘求人

つまり求人票とは条件が違うとういことだ。
小生の場合は、電話したあと面接で待遇を決めたので、嘘面接嘘条件とでも言おうか。

週休二日の平日休みだったはずが、なぜか隔週土曜出勤の日曜休み。 5回ぐらい社長に交渉し、月3,4回のみ平日休みになったが、当然納得行く結果ではない。
入社後直ぐにボイラーメーカーに出向という話だったが、出向は無しになる。 食い下がったら「半年後」と答えたが、とりあえず答えたといった感じで宛てにはできそうにない。
技術的な仕事に専念し、バイオマス発電が始まる前は書類申請の準備および勉強という話だったが、 ほぼ毎日除草か伐採作業。おかげで刈払い機の扱いと、チェンソーは上手になった。 あと軽トラの運転も。
また技術の勉強会などに参加しようと思っても、親会社から来た上役(糞関西人) が「その日は伐採作業があるからイカンでくださいー」 みたいな一言で全て決まってしまう。
この糞関西人が、太陽光パネルの工事の視察やEPCとのミーティングを次々と邪魔し、 殆ど技術的な仕事に関われなかった。 小生と同じ電気主任技術者の上司(太陽光発電所の主任技術者) でさえも、ほとんど工事に関われなかった。 再三に渡り「電柱の打ち込みは立ち会わせてください」「架台の大1柱は見させてください」 といっていたのにもかかわらず、見られずじまいだった。

ともかく、待遇的に嘘である上に、火力発電の勉強も経験も積めず、 そればかりか太陽光の技術的な経験もまったく積めない現場であった。

ここまで呼んだ人で、この内容を社長なり親会社に言ったらどうだという人もいるだろう。 それは基本的に意味のないことなのだ。 詳しくは後述するが、類が類を呼ぶ。ということだと考えている。

仕事と同僚

仕事は前述のとおり、除草と伐採が主だった。 とくに斜面での伐採は、立っているだけで疲れる上に、 アカシアの棘に苦しめられた。 旅館の裏の法面を刈ったって客が増えるわけじゃあるまいしと同僚とぼやいたものだ。 除草をしていると暑さという大敵(実際ひとり熱中症になった)以外に、 蛇や蜂が出てくる。 特に蜂は種類も数も多く、刈払い機を使用していると羽音も聞こえないためとても危険だ。
除草と伐採の日々の間に、社長の思いつきで変な仕事が入ることがあった。 社長の家の塗装や剪定だったり、花壇をつくったり、畑を作ったり。 畑はユンボで掘り返した後、耕運機でたがやして苗を植える。 会社がブラックっぷりを発揮し、地権者に無断で作った畑なので、後日見つかりお取り潰しに成るのだが…

同僚たちとは良好な関係だった。 これはブルーカラーというか肉体労働の良さなのだろうが、皆人柄が良い。 (人柄が良く、自分の身の程を知っているがため、ブラック企業から脱出しないのかもしれない) 小生はパチンコの話はわからないので、終始オナニーの話ばかりしていた。 それと糞関西人の悪口ね。
社長も糞関西人も会社に居ない時は、みんなでサボったり理由をつけてでかけたりした。 他社の太陽光発電所を見に行くという名目で、何日か和気藹々とドライブを楽しむことができた。

交渉、そして決断

休みについて何度か交渉したように、 親会社にも何度か交渉を持ちかけた。 他にもっている太陽光発電所に移動させてくれだとか、早く出向させてくれだとか。 しかしいずれも却下。

これで小生の腹はほぼ決まったが、もう一つそれを後押しすることがあった。
施主側の会社として入ったつもりだったが、施主側の強みが殆ど無い会社だったようだ。 というのは、確かに出資者側の会社だが額面が小さく、大部分は外資が出資している。 将来の仕事は発電所の管理となっているが、もはや請負ビルメン状態。 外資の言うままに管理費を大幅削減させられ(これをあっさり受け入れる時点で立場が弱いことがわかる) 、管理も頭受けではなくどこかの下に入るようになるようだ。
となると発電事業が始まっても待遇は改善されない可能性が高い。 また「可動保証」なる厳しい保証をしなければならないため(日本の企業は基本的に受け入れない保証) 業務が厳しくなる可能性が高い(例えば、雪や雷雨でもパネルの確認に行かされる)

最大の決め手は人間だ。 社長の人間性および経営スタイル。 無能な関西人。 その関西人を重用する社長。 それを(小生の提言がありながら)見過ごす親会社。
社長と親会社の担当者と無能な関西人が仲良しな時点で、もう打つて無しだ。 ビルメン時代は取締役を上手く飛ばしたこともあったが、この現場では手のうちようがない。 同僚を纏めてみんなで退職届を出して交渉しても無駄だろう。 仮にそんな難しい手をつかって上手く行ったとして、 親会社や社長が変わらないかぎり、同じことを繰り返すからだ。

類は類を呼ぶ。 目に見えることしか評価しない人間の周りには、同様の人間ばかり集まる。 他人を徹底的に信用しない人間は、本当に力になってくれる人間と関われない。 ケチで強欲な人間は最後には金に逃げられる。なぜなら周りの人間も強欲でいかに 金を奪い取ろうかと考えている人間ばかりだからだ。

そんなわけで、世話を焼いてくれた上司(太陽光発電の電気主任技術者のおっさん62歳 元大手企業取締役) の勧めもあり、転職活動を開始したのでした。

外資系出資者の利益獲得モデル

外資系のやることは恐ろしい。 これは本事業に関わる外資系出資者がやっているであろうことだ。 そして同じような事をしている外資系はたくさんある。 日本のFIT(エネルギー買取制度)を狙い撃ちにすべく、たくさんの会社が進出してきている。 今回の転職で、そのような会社に面談に行ったが要求が高すぎて入ることはできなかった。

外資系事業モデルの例
@SPC(特別目的会社)を設立して事業計画を作る。
A事業計画のみの担保なしでFundを組み、金を引っ張る(200億)
BEPC(大手ゼネコン)に170億で丸投げする(30億抜く。この時点で事業の成否にかかわらず儲かる)
C発電事業を継続しても儲からないようなら、SPCの株をまるごと売る。 ※実際に施工中にもかかわらず、他の外資に現場を見せに来ていた。

という修羅の世界なのです。
昨今、メガソーラー発電所の経営破綻が激増していますが、外資系はそれでも儲かっています。 そして破綻したメガソーラーは、そのまま放置されるか他の外資に格安で買い取られる運命にあります。

類が類を呼ぶではないでしょうが、そういう経営者にはそういう話が舞い込んでくるのでしょう。



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