禿ヒッキーの生活

自営業を諦め、職業訓練校に通うことに決めた。
どうしてそうなったかというのは、禿ライフを見ていただければわかるが、こちらにも大方書いておく。

禿ヒッキーの頃、小生は毎日絶望していた。
この若さで禿てしまった悔しさとか不遇さを嘆くこともそうだが、 20代後半ともなると、また別のものが顔をもたげてくる。 自分の今後、将来だ。
これがまた小生を絶望させることになる。 考えて見ればわかるが、資格も職歴もないうえにツルッパゲな男を どこのまともな企業が雇うだろうか?  ただでさえ不景気で人あまり、なおかつゆとり世代と違って 人数が多い団塊ジュニア世代である。 小生を待ち受けるのは必然的にブラック企業、ブラックバイトということになる。
ふたたびあのブラックリゾートバイトみたいなことを(場合によってはそれより悪い )、それも一生続けていく事を考えると絶望しか感じなかった。 日本社会は若ハゲに死ねと言っている。そうとしか思えなかった。

死んでしまえばいい。 このままフリーターしつつ半ば引きこもりのような生活を続けて、親が死んだら 生活保護で食いつないで、それもダメなら死んでしまえばいい?  できるだろうか? 死ねるだろうか? 
自信がない。自殺する自信がない。 自殺できないと、最低最悪のブラック企業暮らしをすることになる。 ただ苦痛だけの暮らしに、耐えられないけど無理やり耐えながら生きていくのだろうか?
そんなことをぐるぐる頭の中で考えては、夜になっても眠れず、 スピリタスを煽って無理やりぶっ倒れるように寝るような日々を続けていた。

親の進めによってなんとなく始めた自営業をやっていた時も、 さっそく上手くいかなくなって同じような生活に戻った。
自営業をするためにバイトをやめてしまっていたので、なおさら切羽が詰まった感があった。

自殺する自分。ブラック企業で一生を過ごす自分。生活保護を打ち切られホームレスになる自分。
そのどれもが恐ろしかった。 本当にペットの犬(当時まだ生きていた)が羨ましく思えた。 彼の人生は後数年だろうが、毎日安心して眠り、毎日のんびり過ごして怒られることも咎められることもない。 自分の人生が消えてなくなってくれれば良いと思った。
この頃の僕の気持ちを第三者に分かりやすく示すのは難しいかもしれない。 だけどある2chの書き込みが、僕の心を強く打った事を書いておこう。
生きたくない死にたくない生きたくない死にたくない生きたくない死にたくない生きたくない死にたくない生きたくない死にたくない生きたくない死にたくない生きたくない死にたくない…

どうせ絶望しか無いなら

絶望していても、年は取る。
年をとるほど不利になるのは解っている。 けれども、世間様の自分への評価も解っている。 そして世間が禿に冷たいことも、挫折した人間を助けてくれないことも、 それと対比するように順風満帆な美人を酷く好むことも知っている。
そんなことを考えて、また絶望する。

絶望の思考を繰り返す毎日の中で、ふと思った。
僕が自殺する度胸がないのは、覚悟がないからだ。 覚悟を付けるにはどうしたらいい?  もう完全に自分はダメだ、とはっきり理解すればいい。

今度は、計画的に、自分なりに考えて、社会にぶつかってみよう。 それでダメだったら、ある程度覚悟が付くのではないか?  それでも死ぬ覚悟が付かないのなら、昔からやりたかったバックパッカーをやればいい。 旅先で野垂れ死ぬのならば自殺より容易いだろう。 あるいはサンガでもいい。森のなかでサバイバル生活をして、 無理なら自然に死ぬだろう。

他人から見たら馬鹿げた考えかも知れないが、 僕にとってはそれは、絶望の毎日を過ごすよりは遥かにマシな未来に思えた。

社会復帰への道乗り

20代後半、職歴資格なし、ツルッパゲ。
社会復帰して働こうと思っても、こんな人間を雇おうと思う まともな会社はあるわけない。
この不景気にまともな待遇で募集すればいくらでも人は来る。 好き好んでスキンヘッドの人間を取るとは思えない。
僕の行く先にはブラック企業のみが待ち受けているように思えた。

小生の希望する労働環境の優先順位は、@残業がない A休みが多い(できれば土日以外が休みのシフト制)  B仕事がきつくない
といったところだった。結婚や勝ち組人生を諦めた人間にとって、 年収はそれほど重要な条件には思えなかった。

小生の希望と、小生の現状、この2つを鑑みつつ何とか辿り着けそうだと思った 職業がヴィル面、2chで言うところのウンコメンだった。 有り余る時間を利用してネットを使い、ヴィルメンになるための道のりを方策した結果、 職業訓練校の電気工事科(1年コース)に通うことにした。 この経緯もダメ人間ライフに細くあるが、大雑把に言うと業界的に「電気」が 優位なのと1年間資格の勉強をしたかったためだ。

進むべき方向が決まると、だいぶ気が楽になった。
考えてみれば、自主的に何かに挑戦しようと本気で思ったのは、これが初めてなのかもしれない。 別に失敗してもどうなるものでもない。元のニートに戻るだけだし、誰かに怒られるわけでもない。 何も恐れることがない勝負だ。
こういう感覚も、また初めてだったのだろうと思う。 禿げる前までは、普通の人生に復帰することを考え、 普通の人が持つカッコつけやプライドがあったのだろう。 少なくとも底辺職に付くために、いい年こいて一から勉強し直そうなどという 思想には至らなかっただろう。
この時から僕は、何かの岐路に立った時には 「失敗したって元のニートに戻るだけだ」と心のなかで唱え、安牌をつかもうとする 心に支配されずに決断できるようになった。

それから訓練校入学までは、警備バイトをしながら図書館へ通い、 危険物などの 簡単な資格を取得していった。

訓練校選び。 近年は訓練校の数を国策で大幅に減らしているため、 片道2時間近くかかる学校へ行く羽目になった。
本当にこの国の「金>>>国民生活」という思想にはうんざりする。

職業訓練校 前半戦

入試試験。
訓練校でも一応ある。
電気工事科は倍率が1倍ちょっと。 場合によっては数人落ちると言った程度であるが、 難なく突破した。

電気工事科、そこはクレイジーなところだった。
中卒から40手前のおっさんまでなんでもござれ。 それが共同生活をする。
午前中は座学、午後は実技でドライバーやハンマーを握った。
若い奴は漫画本を読みふけり、オジサンは新聞を眺め、 小生のような輩は資格の勉強に励み、一部の生徒が講師の話を聴く、そんな授業風景だった。
資格の勉強をしている小生を目の敵にする講師について役所に抗議文を送ったり、 殴り合いの喧嘩があったり(僕以外の人達)、 昼休みは誰かが持ってきたゲーム機を訓練校のテレビにつないで遊んでたりと、 ともかくクレイジーだった。 後に担任(この人達だけは公務員)が「とても印象に残るクラスだった」 と言ったことを考えるに、いくら得も知れぬ連中の寄せ集めの訓練校といえども 異常だったのだろうと思う。
そんな中にありながらスキンヘッドの小生は、案外普通にクラスに溶け込んだ。
訓練校生という存在自体が、それぞれバラバラの目的を持っている という共通認識があるため、公教育のようなヒエラルキーやイジメは起こりにくいようだ。
仲良くなる人、クラスの中心になる人、何をやってもダメな奴、根暗なやつ、 色んな人がいたけど、みんな基本は「他人は他人」というのがあった。 根暗なやつや見栄っ張りな奴は、ただ相手にしないだけで、いかれた公教育のヒエラルキー のようにいちいち積極的に鹹かうというようなことはなかった。 いちいち進んで厄介事をつくろうなどと思うのは、暇な学生ぐらいなものなのだろう。

そんなわけで、訓練校ではおおかた快適に暮らせたのだが、 雇用保険をもらえない小生にとって楽なものでもなかった。

交通費弁当代その他を稼がねばならないため、土日はバイト、平日は訓練校という 日々に加え、毎日訓練校に1時間早く行き資格の勉強をした。昼休みも勉強だ。
そんな1年を送ったが、疲れたなと感じることはあっても苦痛を感じることはなかった。
訓練校は月に何度が水曜日が半ドンになる。これが至福であった。
訓練校が早く終わるのを利用して、飲みに行くのも楽しみだった。 結構な頻度で同僚?と飲みに行った。

そんなこんなで、訓練校在籍中に簡単な資格をおおかた取り、デンケンも二科目取ることが出来た。

職業訓練校 後半戦

訓練校の後半の半年は、会社見学に積極的に行った。
訓練校にいても、いつもと変わらぬ座学と実務だけだし、 まともな就職活動をしたことのない小生にとっては良い経験になるだろうと考えた。
何よりも世間様から見て小生の評価が低いのはわかっていたので、 数撃ちゃ当たるぐらいの勢いで取り組もうと 攻めの姿勢で行こうと心に決めていたことが大きい。
ただでさえ職歴に穴があるって時点でアレなのに、スキンヘッドともなれば普通は採用しないだろう。
すなわち小生は「普通に採用されない人」であると自覚があったので、落とされた時にプライドが傷つく心配がまったくないままに求人に応募できた。
駄目だったらバックパッカーになるだけだ。
また、人生で今の時期しか、いろいろな(ヴィルメンに限るが)会社をいくつも見てまわるということは出来ないかもしれない。だったらゴガクのためにも見るだけ見てやろ うという心積もりもあった。

訓練校には、訓練校専用の求人情報がある。
企業が訓練校に向けて求人情報を出すのだ。
職安の求人と比べてみたが、訓練校のほうが量,質ともに圧倒的に良い。
だから、新卒を逃し中古品になってしまった人間たちは、職安に通うより訓練校経由のほうが圧倒的に有利だと思う。



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