カニ4

何かにぶつかった。どうやら僕は、ずっとカニたちを眺めながらぼんやり歩いていたようだ。 目の前のカニが怒った。思ったとおり頭がすれてテカテカのカニだった。
「怒」だ。
僕は思った。カニはしばらく何かをわめいていたが、放っておく事にした。 そのカニは僕の腕をもぎとって頭にのせ、いってしまった。
しばらくして、一群のカニが僕を見て笑った。

かわいそうな人達。
 蔑み、愚弄、卑下。全ては「喜」に内包される。

かわいそうな人達。

僕はどうやら泡を吹いたカニだったようだ。だから、 もう死ななくてはならない。 こうしてひっくり返っているうちに、気づいた事がひとつ。
このカニの群れは、カニたちは前に進んでいる。
気づいたとたん、僕の喉のもっと奥のほうから、泡が吹き出して来た。
悪臭がする。かわいそうな人達。かわいそうな人達。



TOP    著作:若ハゲ
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