弱肉強食

人間の弱肉強食

近年になって、日本では自殺者が増えた。
労働者の生活水準が下がる一方、金持ちは増えている。いわゆる二極化が進んでいるのは、 多くの人が認めるところだと想う。
サラリーをもらうものの中でも、現代に適合しバリバリ働く人もいれば、 ストレスで胃に穴をあける人もいる。
はやりの言葉でいうなら「勝ち組み・負け組み」であろうか。

このような、強いものが勝ちつづける、得しつづける状況を見て
「弱肉強食だ。自然界とおなじ、弱肉強食になったんだ。これが正常なんだよ。 弱い奴がしんでいくんだ」という人がいる。
これは大いなる間違いである。

弱肉強食と種内淘汰

自然界でいう弱肉強食とは、強いものが弱いものを食うことである。
しかし、それは他種族の関係の話である。
たとえば、鹿が狼に食われたり、ヌーがワニに捕食される。広くみれば、蝙蝠が蛾を捕らえるのも、 宿り木がブナを絞め殺すのも、牛が草を食むのも弱肉強食の一部であろう。
いっぽう、同種同士の争い、たとえばメスの取り合いでワニのオスが戦うのは、弱肉強食ではなく種内淘汰である。
人間同士の殺し合いはもちろん、殺しが規制されている現代の 人間同士のつぶし合いは、種内淘汰のゆがんだ形である。

弱肉強食の効用

われらが母、ガイアのシステム。すなわち自然のシステムは、 たいてい、物事を一定に保つように出来ている。
弱肉強食はどのような効果を担っているかと言えば、一番分かりやすいのが、 個体数の調整だ。
たとえばサバンナでシマウマの天敵であるライオンがいなくなったならば、 シマウマが大増殖してサバンナの草を食い尽くしてしまう。 そして他の草食動物はおろか、シマウマ自身も飢えによって滅びの道をたどる。
弱肉強食は、捕食されるほうにとっても必要不可欠なシステムだ。

さらに天敵がいるから存在できる種もある。
サバンナの川沿いや動物の通り道に生える草たち。彼らは頻繁に草食動物にかじられるが、 それでも成長が早く子孫を残すことが出来るし、根っこさえ残っていれば生き延びることが出来る。
しかし草食動物たちが来なくなったらどうなるか?
食まれるのには弱いが、他の部分(乾燥に強かったり、繁殖力が旺盛だったり)で彼らを凌駕する 草に取って代わられるのである。
まさに天敵である草食動物によって、生存できていると言える。

奴隷は侵略者によって生かされていると言えるのか?
日本の労働者は資本者によって生かされているのか?
彼らの都合で行われるリストラは、労働者にとって有益なことなのだろうか?
とても弱肉強食というシステムには、似つかわしくないように私には見える。

種内淘汰

種内淘汰が起きるにはいくつか条件がある。
ひとつは同種の個体数が多いこと。
個体数が多くないと、同種同士が出会う可能性が低くなり、争いは起こらなくなる。
また、縄張りのぶつかり合いも少なくなるし、メスの取り合いも少なくなる。
個体数が少ないときは、淘汰の要素が少なくなり、増殖に拍車をかける。
ガイアは少ない個体を救済しようとする。 近視的にみればガイアは無慈悲に見えるかもしれないが、 決して弱い生命、弱者、負け組みを蹴落とすような真似はしない。

他の条件としては、外敵が少ないこと。現在の環境に適応していること。 生態系の中で(繁殖力も含めて)強く、増加傾向にあること。
いずれも個体数の増加につながることである。

弱肉強食と種内淘汰の違い

弱肉強食は、強いもの、すなわち現在の環境に適応した生物が生き残る。
いっぽう種内淘汰では、同種の中で優れたもの、環境に適応したものが 生き残るように思えるが、そうではない。
これが弱肉強食と種内淘汰の違いだ。

では、種内淘汰はその種に何をもたらすのか?
生物としての弱体化、劣化である。まったく弱肉強食と逆のことが起こるのである。
ガイアは強い生物には制裁を下さなければ成らない。
それも一時的でなく、恒久的にゆっくりと効果が出るような方法で無ければ成らない。
なぜなら、自然は変化を嫌うから。ゆっくりと調節するためである。

種内淘汰の弊害

種内淘汰の弱体化の例をあげよう。
孔雀という鳥を皆さんは知っているだろう。美しい羽が代名詞になっている。
メスがオスを選ぶとき、羽の美しさ、艶やかさを基準にする。美しい羽にメスは性的興奮を覚えるのだ。 つまり、美しい羽の持ち主がモテる訳だ。
ここで考えてみて欲しい。美しい羽は自然の中でなんの役に立つであろう?
むしろ派手で大げさな羽は、カモフラージュしにくく、移動を困難にする。 シンプルな羽のほうが飛行にも有利だ。 つまり生命としての弱体化である。そして、孔雀の中では、より羽の美しいもの、より弱者がモテるのである。
これこそ正に、種内淘汰の弊害。ガイアが増えすぎた固体へ制裁をしているのである。

種内淘汰は時にバランスとりにとどまらず、絶滅的な弱体化をもたらす場合もある。
セイラン は風きり羽の大きさが、メスに直接的な刺激を与える。 結果、風きり羽の大きな固体がモテて子孫を残し、それを繰り返し、ほぼ飛行能力を失ってしまった。
飛べる鳥と、飛べない鳥と、どちらが生き残りやすいだろうか? 考えるまでも無いだろう。

種内淘汰が起こる時点で、その種は自然から見れば異常なのである。

人間の種内淘汰

人間が自然を蹂躙し、個体数を異常なペースで増やし続けていることは、議論の余地がないだろう。
自然が嫌う「変化」を一方的に与えつづけ、正のフィードバックを負のフィードバックに変えていく人間を ガイアは許しはしない。 他の生物よりはるかに強力な種内淘汰が働くはずである。

人間社会。とくに経済先進国、日本ではどういう男がもてるだろう。
仕事が好きな男が女性に好まれる。満員電車に乗っても疲れず、 すし詰めのオフィスと座りっぱなしのデスクワークにもストレスを感じない、 生物としては異常な固体がもてる。
また多くの場合、肉体労働者(屈強な者)よりも知的労働者(身体能力の弱いもの)が多くのサラリーをもらい、 高く評価される。
見た目においても、最近ではアゴがとがっている男がもてる。 咀嚼能力が弱く、食べるものが限定されるのだから、生物としてはより劣った固体と云わざるを得ない。

また、ガイアは増えすぎた種に、特有の外敵や病気を与える。
鳥インフルエンザなどが良い例だが、エイズは素晴らしい効力を発揮している。 モテる人間、性交の多い人間ほどエイズにかかりやすい。 より劣化した固体がモテるとすれば、人間は劣化に群がり、 エイズという病気・劣化を広めていくのである。種内淘汰により、自ら絶滅への道を突き進んでいるのである。

おくる言葉

ガイアから見たら、経済先進国の「イケメン」たちは、さぞかし劣った醜い弱体化した固体に見えるだろう。
そして大量生産者、消費者に地球は限りない陵辱を受け犯され続けている。
美男美女の皆さん。あなたたちは地球の醜い害虫です。
成功者の皆さん。あなたたちは正に地球のガン細胞です。
人間社会という特殊なリージョンでもてはやされ、人間の弱体化、劣化、絶滅へのスピードを速めているのです。



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