カニの群れはまだまだ続く。黒服を着た軍隊ガニ。おや、アレは頭から
茶色い葉っぱをたれてるぞ。杖を突いて、自転車に乗って、煙を吐いて・・・・・・
そのとき、一匹のカニが泡を吹いて倒れた。吸い寄せられるように寄り集まるカニたち。喧騒が
大きくなった。カニの輪だ!
そうだよね、助け合いは必要だよね。
けれどもカニの輪は大きくなるばかり。カニ一匹にカニ五十匹。彼らは気づいていない。
やがて日は高く上り、ある一匹の頭を焦がした。また輪ができた。カニ一匹にカニ五十匹。
一と一に、五十と五十。
百と二匹の後ろから、どうにも大きなカニがやってきて、ずんずん進んだ。
一つの輪を蹴散らし、二つ目の輪を踏みにじった。カニは、蹴り散らされて足が取れたり、踏まれて死んだりした。
大きなカニの後ろを、別のカニの群れが続いた。輪を組んでいたカニも群れに加わり、
足を無くしたものも体を引きずり進んだ。
そのときの彼らの表情は「怒」だったか「哀」だったか・・・ 「喜」ではあるまい。ましては―――